投資用不動産を所有する多くの経営者が、資産管理会社を設立しています。
「経費にできる範囲が広がって、税金が減る」
「事業承継親や相続税対策になる」
と、聞いたことのある方もいらっしゃると思います。
確かに、個人で投資用不動産を管理するより、資産管理会社を作って、その法人が不動産を運用する方が、さまざまなメリットを享受することができます。
ここでは、小さな会社の経営者が資産管理会社を設立するメリットや注意点について解説します。
資産管理会社とは?
資産管理会社とは、オーナーの資産の管理を目的として設立される会社のことです。オーナー自身で設立し、オーナーのみのために業務が行われるため、プライベートカンパニーと呼ばれることもあります。
会社形態としては「合同会社」や「株式会社」といった形態をとることが多く、社名だけでは通常の事業会社と区別がつきません。しかし、実態としては、資産管理会社はオーナーのための会社として存在し、資産管理以外の事業活動は行わないのが一般的です。
不動産賃貸業の場合、通常は入居者から支払われる家賃収入は直接オーナー(個人)に振り込まれますが、資産管理会社を設立した場合、賃貸経営で得た家賃収入を資産管理会社で収受します。
資産管理会社を設立するメリットとは?
不動産投資を行っている経営者が資産管理会社を設立した場合、大きく5つのメリットが挙げられます。
(1)所得税の節税
資産管理会社を設立することによって、個人ではなく法人として売上(不動産賃貸収入)を得るため、所得税の税率が低く抑えられることになり、所得税の節税に役立ちます。
個人の所得税は累進課税であるため、高収入であるほど所得税の負担が重くなります。住民税の負担も含めると、個人の所得からは最大で約55%もの税金が課税されます。
しかし、法人の実効税率はほとんどの場合約23%であるため、法人住民税を支払ったとしても支払う税金が少なくなります。
(2)所得の分散による節税
法人から家族に給与を支払うと、社長が全ての所得を得る場合と比較して、全体の税額は少なくなります。これを所得の分散といいます。
例えば、奥さんが無収入もしくは低収入の場合、既に経営者として高収入の社長が資産管理会社からの役員報酬をもらうより、奥さんに同じ額の給与を支払った方が、世帯で考えた支払い税額は少なくて済み、手残りの現金が増える計算となります。
(3)経費範囲の拡大
個人として不動産投資を行うよりも、資産管理会社を設立したほうが、経費の自由度は高くなります。具体的には、生命保険や社宅制度など実用的な経費を算入することが可能です。
(4)赤字を10年繰り越せる
法人で青色申告の場合、赤字が生じた事業年度の翌年度以降、10年間赤字を繰り越すことができます(ただし、平成30年4月1日前に開始した事業年度において生じた欠損金額の繰越期間は9年)
具体的には、翌期以降に黒字の場合は赤字と相殺することで課税所得を減らすことができます。法人税の金額は課税所得をもとに算出されるため、支払うべき法人税が減り、手元に現金を残すことができます。
もちろん、不要な経費で赤字にする必要はありませんが、赤字になってしまった場合は翌期以降の節税となります。
(5)スムーズな事業承継や相続対策
資産管理会社が一括して不動産を所有している場合、資産管理会社の株式を分配して相続させることによって定量的に相続が進められるため、不公平感がなくなり、争続(相続時の争い)が起こりにくいメリットがあります。
また、相続が発生した場合でも、相続の対象となる資産(相続財産)はあくまで資産管理会社の株式となるため、自社株が社外に流出するリスクを抑えることが可能です。
資産管理会社を設立する際の注意点
資産管理会社を設立した場合のメリットについてお伝えしましたが、もちろんリスクやデメリットもあります。ここでは、資産管理会社を設立する際の注意点について解説します。
(1)初期費用がかかる
会社を設立するには、下記のような初期費用が発生します。
・法人登記の登録免許税
・定款の認証手数料
・定款の収入印紙代
・印鑑証明書の取得費用や謄本取得費用
・司法書士への報酬
設立する資産管理会社の資本金の額にもよりますが、合同会社設立の場合で15万円程度、株式会社ですと30万円程度の初期費用が発生することをあらかじめ考えておきましょう。
(2)ランニングコストが発生する
会社を維持していくには、一定のランニングコストがかかります。
たとえ利益が出なくて赤字であっても法人住民税が課税されますし、利益が出れば法人税が課税されます。また、一定規模以上の法人の場合、市区町村によっては事業所税も課税されます。
法人化することで会計処理が複雑になるため、専門家である税理士や会計士に依頼することになります。その場合、毎年数十万円程度の費用負担が発生します。
そのほか、家族が役員や従業員として従事している場合、毎月の社会保険料の負担も発生します。
資産管理会社を設立する場合のメリットや注意点について、お伝えさせていただきました。もし、ご興味のある方は、専門家のアドバイスを受けながら進めていくことをお勧めします。
0 件のコメント:
コメントを投稿